ジェシー・ジェームズの暗殺 ブラピが心底惚れ、名演を魅せた作品を超解説!

勝手ながら映画解説
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どうも、けんせです。

今回は、久しぶりに本気で書きました。いつも本気で書けよと思いますが、今回はかなりボリューミーにお届けできます。

今回の作品はこちら!

ジェシー・ジェームズの暗殺

この映画は、ブラッド・ピットが脚本に惚れこみ、自ら主演と製作を務めた作品です。第64回ヴェネツィア国際映画祭では男優賞を受賞していて、「演技を超えた演技だ」などと絶賛されています。また第80回アカデミー賞では、助演俳優賞(ケイシー・アフレック)撮影賞(ロジャー・ディーキンス)をノミネートしています。原作はロン・ハンセン。監督・脚本はアンドリュードミニク

しかしながらあまりヒットせず、ブラピ作品の中でも埋もれてしまっている感があります。僕も教えてもらうまでは知りませんでした。(お恥ずかしい)

しかし見た人曰く、ブラピ史上一番の名演技とさえ言われているんです。ワンハリで遂にオスカーを獲ったブラピの、一番の名演技が見られる作品とは、一体何なのでしょうか?

そこで今回は、この映画の感想・魅力もそうですが、この映画を観る際の解説知識も豊富にお話していきたいと思います。これを読んでから映画を見ていただくと、より映画が見えてくるよう書くので、是非最後までお付き合いください。

あらすじ

悪名高きアウトローとして数々の犯罪に手を染め、法をあざけり、自分自身のルールで生きてきたジェシー・ジェームズ。理想に燃える野心家の若者ロバート・フォードは、そんなジェシーの仲間になれたことを心から喜んでいたが、思わぬ事態が彼らを待ち受ける。(シネマトゥデイより抜粋)

この映画、どうだった?

★★★★★★

やや複雑だが、キャスト陣のアンサンブルは見事。

ブラッド・ピットが凄すぎる!

この映画、正直かなり難しいです。僕も一度観ただけでは全部わからなかったです。公開時の興行の方も全く振るっておらず、制作費の半分程度しかありません。では失敗作だったのか?否!随所の役者陣の演技は凄まじく、唸るほかありませんでした!
この写真を見てもらうとわかる通り、豪華すぎるキャスト陣です!この映画の後、アカデミー賞受賞した人がこの中だけで3人もいます!さらにホークアイもいますしね。この通り、実力派の役者陣がこぞって出ているんです。
さらに、撮影監督はあのロジャー・ディーキンスですし、製作にはブラッド・ピットに加え、リドリー・スコットもいるんです。
では何故、この映画がヒットしなかったのか。それは、この物語がとても難解であったから。そもそも僕ら日本人にはジェシー・ジェームズという人がいたことすら知らない人も多くいるのではないでしょうか。
そこでまずは、この映画の分かりにくいところを解きほぐしてから、感想・見どころをお話していきましょう。その後に、このジェシー・ジェームズとは何者かというのもドキュメンタリーなどを調べたりしたものを解説しています。

この映画をどう見るか

ではまず、この映画の難解な部分をお話していきましょう。この映画を観終わった後、大抵の人は一体何だったのか分からなくなってしまうと思います。ブラピが出てるからカッコいいアウトローものだと思いきや、なんだか得体のしれないお話をぶつけられて困惑してしまうんです。
ズバリ言いますとこの映画は、メディアによって作られた憧れのスターの実態と、それに憧れ自らもスターになりたがるファンが織りなす、シェイクスピア劇です。
…あまり決まらなかったですね。残念。詳しく書いていきましょう。
まずこのジェシー・ジェームズは、新聞に取り上げられることで名高いアウトローになりました。ロバート・フォードも、彼の新聞記事をみて、同じ地元の有名人としていつしか熱狂的なファンになりました。そして彼を知る程に自らの境遇と似ていると感じ、自分と重ね合わせていった結果、自身も彼のような男になりたいと思うようになっています。
しかし、新聞に書かれたものとはいえ、彼のやっていることは紛れもなく強盗殺人。正義のヒーローではありません。抵抗できない者を殺害し、敢えて新聞に煽らせるという、力を誇示するDQNのようです。
さらに、その当人のジェシー・ジェームズは、その非道な犯罪者の一面に加え、敬虔なキリスト教徒で家族を愛する一家の父という、二面性を持っています。
それに加えて、自身の名声を周りが叫ぶ中、当の本人もそれに固執しています。自身の名声は実はすでに過去のものであるのに、自らの権力や力を誇示しようと、疑心暗鬼になったり、仲間を脅したり、殺したりもします。虚栄心こそが彼の弱点で、その行為自体にジェシー自身も迷いが生じており、すごく不安定な人物とも言えます。
そんな彼に憧れを抱き、執心するロバート・フォード(ボブ)は、ジェシーの強盗団に入ることで初めてジェシーに近づき、本物のジェシーや彼の仲間と過ごします。
そして、今まで自身が今まで聞いてきたジェシーとジェシー本人が大きくかけ離れていることに動揺します。風呂でさえ銃を持ち込む用心深さは臆病さ、人望で従えるカリスマではなく恐怖で人を威圧する独裁者とすら見えてきます。そんな彼の強盗団の面々も、親族として威張る者、裏切りを企てる者、何も考えない兄貴と、自身の想像とはかけ離れたものでした。
そんな彼の行為を受けるうちに、ボブは彼に対し憎悪を抱いていきます。
しかし、ボブは末っ子であり、また強盗団では新入りということもあったので、周りから始終バカにされていました。そんな劣等感の塊のようだったボブに優しくしてくれたのは、他でもないジェシーだったのです。彼はボブを自身の傍に置いたり、彼のために銃も買ってくれました。そこには、ボブが思い描いていたジェシーがいました。
そんなスターのようなジェシーを見て、彼のようになりたいと願うようになっていきます。
一方で彼を尊敬し、一方で彼を憎む。自身の劣等感を有名人といることで癒す。そしてその心には、自らも有名になりたい、なって周りを見返したい、というものがあったのでしょう。そして一層、ジェシーに執着していくんです。
そんな中、ボブはある事件をきっかけにジェシーに背信してしまい、彼に命を狙われるかもしれないと怯えるあまり、ジェシーの殺害を企てます。
そして、この愛憎入り混じる関係の中、ボブはジェシーを殺せば自分が有名になれるという考えを抱くようになるのです。名声を手にすることの意味を大して考えることなく、この野望を実現できる時を、ジェシーに怯えながらじっと待つことになるんです。
この複雑なる愛憎劇、西部を舞台にしたシェイクスピアの悲劇と言えると思います。非常に複雑で難解ですが、この人物たちの心の機微を丁寧にすくい、紡いでいるのがこの映画なんです。
逆に言うと、この映画はネタバレというものはなく、どちらかというとこういうのが分かっている方が映画を楽しめるのではないでしょうか。

映画の感想!

ではここからこの映画の感想を書いていきます。

豪華キャスト陣の演技合戦は絶品!

後にアカデミー賞を受賞する面々や、ホークアイをはじめ、彼らの演技合戦は必見です!
ジェシー以外のほとんどの人物が腹に何か抱えたような曲者です。それらが何かの拍子に露わになる時のハラハラ感は凄まじいですし、ぶつかり合った時の緊迫感は迫力満点です!
この映画は凄くゆったりとしていて、逆にそれが緊張の糸をキリキリと張られていると感じ、ある時一気に切れたときの凄まじい暴力は絶品です!
特に暗殺者となるロバート・フォード演じるケイシー・アフレックコンプレックスを持つ理知的な弟の演技と、その弟に振り回されながらも立ち回っていくチャーリー・フォード演じるサム・ロックウェルは面白いです!

演技を超えた⁉ブラッド・ピットの演技は凄すぎる。

そして何より、この映画のブラッド・ピット尋常じゃありません彼自身が主演・製作を熱望しただけあって、彼の演技はもはや演技を超えたとさえ言われています。

ジェシーの持つ複雑で破綻した性格を、かくも見事に演じられています。栄光を忘れられずもがき疑心暗鬼による恐怖を支配しようとする残忍な男や、家族を前に誠実であろうとする一家の父の姿は、同一人物とは思えないほどに鮮やかです!

風呂場や寝る時も肌身離さず銃を携帯。自身に離反したと思われる者は容赦なく殺す。しかし時には自身の弱さを見せる。しかしそこにも罠なんじゃないかとさえ思わせる…複雑なるジェシーの精神が浮き彫りになるシーンは圧巻。

この食事のシーンは最高!冷や冷やハラハラします!

とくにクライマックス、ジェシーが暗殺される時の演技は素晴らしい!彼が死ぬ前に行った動きの一つ一つが繊細です。彼が撃たれた直後の死に様の演技も見事!「ファイト・クラブ」の殴られ演技も凄かったですが、今回のはまさに極めています。

現在のブラピのキャリアでも非常に凄まじい演技をされています!必見です!

ここに注目して見て!

ここからは映画本編を見ていて感じたことを少し深く話していきます。

七人の侍の要素がいくつかある?

これは確かな証拠があるわけではないのですが、いくつかのシーンを見て、「七人の侍だ」と思ったのでそこを見ていきます。

まずはギャング団が冒頭で山の中に潜伏しているシーン。ここの馬の配置や、彼らがギャング団であることから、「七人の侍」の野武士たちのようでした。ボブがフランクに会話をしに行くシーンも、どこか野武士から鉄砲を奪う菊千代みたいですからね。

あと、隠れ家での撃ち合いでジェレミー・レナー扮するウッド・ハイトを殺してしまい、凍った大地に葬るシーン。ここでの死体の置かれ方や雪の被り方が、菊千代の最期と重なって見えるんです。ちゃんとお尻から雪が被っていくのも、菊千代の泥まみれのお尻が雨によって弾かれていくような感じがありました。

そもそも「七人の侍」がアメリカの西部劇に対抗して作られたものなので、それがこのような形で再び西部劇に影響を与えていると考えると、なんか面白いですね。

ジェシー・ジェームズを描いた他の作品

ジェシー・ジェームズはアメリカでは大変な人気があることから、幾度かに渡り映像化されています。

映画で一番最初の作品は、1939年地獄への道」(原題:Jesse James)です。原題がまんまですね。監督はヘンリー・キング。ジェシーを演じているのはタイロン・パワーで、兄のフランクをなんとヘンリー・フォンダが演じています。

映画好きな人にはおなじみな監督、ニコラス・レイ監督による1957年無法の王者ジェシィ・ジェイムス」(原題:The Story Of Jesse James)ではロバート・ワーグナーが演じています。

他に有名な映画だと、「ミネソタ大強盗団」ではロバート・デュバルが、「ロング・ライダーズ」ではジェームズ・キーチが演じています。

ドラマには「ブロンコ」というテレビ西部劇でのエピソードで、なんとジェームズ・コバーンがジェシーを熱演しています。この出演の後、「荒野の七人」や「大脱走」で大スターになっていきます。

ちなみに直接は関係ないのですが、アニメ「ポケットモンスター」でロケット団のムサシとコジロウの英語圏の名前が、ジェシーとジェイムズになっています!ポケモンにまで進出しているんですね!

ムサシがJesse、コジロウがJames

解説:アウトローの死

ここからはこの映画の主人公、ジェシー・ジェームズに関して解説をしていこうと思います。ドキュメンタリー「アウトローの死」などを参考にしてまとめています。

ジェシー・ジェームズについて①

ここでは、「ジェシー・ジェームズの暗殺」で描かれる前のジェシー・ジェームズを解説していきます。

ジェシー・ジェームズ1880年代のアメリカに実在した人物で、合衆国史上もっとも有名なアウトローです。
彼は1847年9月5日(定かではない)、アメリカ中西部にあるミズーリ州クレイ郡に生まれました。兄弟に4歳年上の兄フランクがいます。彼の家は奴隷を労働力に使うタバコ農園を経営していました。
父のロバートは、妻子を捨てて1846年ゴールドラッシュに沸くカリフォルニアへと旅立ち、ジェシーが3歳の頃に亡くなります。そして実家の農園郡に引き取られることになります。父に捨てられ、実家を取り上げられる経験は、その後のジェシーに大いに影響を与え、気難しい人物へとなります。彼は母ゼレルダの手で育てられました。ゼレルダはその後3度再婚しています。彼女は身長が180㎝程あり(当時の男性の平均身長は170㎝!)、理知的で力強く、口が悪かったと伝えられています。この母の不器用な生き方とそれに付随する周囲の噂は、ジェシーの心理的負担となったと考えられています。
1861年、当時ジェシーが13歳の頃、南北戦争が勃発しました。母ゼレルダは南部の大義を声高に代弁していたことから、兄のフランクは当初から参戦し、南軍として従軍しています。
この戦争は、奴隷解放を巡る戦争となっていますが、奴隷解放というのは南部の人たちからすると、南部の文化、南部の誇りを否定されていることになります。現在では、この文化自体にそもそも疑問を感じますがともかく、この南北戦争は奴隷解放だけでなく文化抗争の面もあったんです。
1863年5月ジェームズ家の農場北軍が襲撃します。ジェームズ家が、南軍ゲリラの隠れ家ではないかと疑われたからです。この襲撃により、ジェシーは暴行を受け、ジェシーの義父は首を括られます。これがジェシーに残酷さを与えたと考えられています。
ジェシーが16歳の時、兄もいる南軍ゲリラに自ら参戦します。
この時に2人の人物に出逢ったことにより、ジェシーのその後は決定づけられます。
1人目は、ビル・アンダーソン「血濡れのアンダーソン」と呼ばれ、ゲリラ隊の主要メンバーです。彼はカンザスで大量虐殺を行い、町ごと灰にした人物。ジェームズ兄弟は彼の下で盗みや強盗、殺人を学びます。
2人目がアーチー・クレメント。小柄で若かった彼ですが、「アンダーソンに憑く悪魔」と呼ばれていました。敵を裸にして撃ったり、撃った捕虜の手足を切り刻んだり、死体の頭の皮を剥いだりしていたと伝えられています。とんだサイコ野郎です。
そんな彼らの元、ジェシーも北軍営で6人もの兵士の寝首を掻っ切って殺害するなどゲリラ活動を繰り広げました。
この影響は、後のジェシーにとんでもない影響を与えます。ジェームズ兄弟は人を威嚇することが多いのですが、自らの力をひけらかし他人を従えることで得られる自由と力を好んでいたからで、そのような人物に惹かれるからです。簡単に言うと、DQNです。まあ、ここではちゃんとアウトローとしておきます。
このやりすぎな行為を行っていたゲリラ部隊は北軍の標的となり、1864年ビル・アンダーソンが殺害されるなど、執拗に狙われます。この時の敵に、ジェシーは生涯、苦しめられます。
またこのやりすぎな行為には、味方であった南軍拒絶するようになり、彼らは孤立無援となります。
ジェシーはミズーリ州レキシントンで降伏を決意しますが、ゲリラであることからそのまま標的となり、1865年騎兵と遭遇し、右胸に36口径のコルト銃の銃弾を受け、重傷を負わされます。これは事実上終戦となった、アポマトックス・コートハウスの戦いでの南軍リー将軍の降伏から、約1ヶ月後のことです。
しかしこのとき、ジェシーのいとこのジー・ジェームズが彼を助けたことで一命をとりとめ、後に結婚します。
この南北戦争終結後、南部は北部との再統合に苦しみました。生活は困窮し、北軍強硬派によって制定された新憲法には南部の声を無視したものになっていました。
そのことから軋轢を生み、元ゲリラらによる元北軍の役人や北軍に関係する銀行などを標的とした強盗、殺人が横行します。
ここで、ジェシーがゲリラから悪漢へと変身する出来事が起こります。
当時の元南軍は、共和党過激派の力を削いで自分たちの風通しを良くする狙いがありました。ちなみに共和党は、黒人奴隷制反対をかかげて1854年に結成された政党です。エイブラハム・リンカーンはこの党初の大統領です。
そんな中、1866年の選挙時のこと。ゲリラの生き残りであり、北軍関連の強盗・殺人を繰り返していたアーチー・クレメントが、仲間と共に投票日のレキシントンの町を占拠します。これにより、共和党過激派は敗北します。州知事はこれにより市民軍を派遣、激しい銃撃戦の末、アーチーは群庁舎前で射殺されます。
ゲリラの仲間であったアーチーの射殺は、ジェシーのその後を決めた決定的な出来事でした。このゲリラ活動を止めるか、アーチーらの遺志を継ぎ突き進むのかを迫られます。
ジェシーは遺志を継ぎ、強盗と昔の敵の襲撃を続けることになります。これが、後の伝説的なアウトロー、ジェシー・ジェームズの誕生になります。
ジェシーは兄のフランクに加え、元戦友で残虐な無法者コール・ヤンガーとその兄弟たちと、「ジェイムズ=ヤンガー・ギャング」を結成し、1866年2月13日銀行強盗を成功し、以後銀行や列車を襲い殺人を繰り返すことになります。
ちなみに、これは世界初の銀行強盗の成功だったようで、2月13日は「銀行強盗の日」となっています。
彼らはほかのギャング団とは違ったために、メディアに取り上げられるようになっていきます。1869年ギャラティンの強盗で、彼らは一躍有名になり、この事件で初めてジェシーの名が新聞に載ります。この強盗は、ギャラティンの銀行を襲い、出納係を(ビル・アンダーソンを殺した兵士と勘違いして)射殺したというもの。これをジョン・ニューマン・エドワーズという新聞記者が、この強盗を大胆不敵と称賛し、ジェシーを南部連合軍のシンボルに仕立て上げます。
また、この時代に起きたグレンジャー運動という運動があり、列車強盗は称賛されていました。この運動は、鉄道が農民たちにとって不利益なので規制を求めるものです。小農などは鉄道による新規需要に侵食され負債を抱えて失業する等、厳しい状況にあったんです。そんな南部の彼らにとって、列車強盗をするジェシーのギャング団の行為は、鉄道に対する抵抗運動のように思われ、英雄のように扱っていきます。
ここから、ジェームズ兄弟は伝説化していきます。ジェシーは列車強盗の際にメモを取りそれを乗客に渡して新聞に載せるように仕向けました。新聞受けしそうな逸話をわざと残すことで、さらに名声を得るためです。新聞好きなジェシーにはこれは好都合なことで、自らの名と力が名声によってますます強くなることを好んでいました。
そんな彼に対し、鉄道会社も黙ってはおらず、彼を捕まえるためにピンカートン探偵社に依頼します。この当時のピンカートン探偵社は私立でありながら、実質唯一の国家警察でした。
大胆不敵な強盗をしながらも逃げ続けたことにより、ジェシーは重要人物になり、大規模な捜査が行われます。バージニア州やノースカロライナ州、ジョージア州、果てはニューヨーク州やニュージャージー州の北部にまで探偵たちの捜査が広がりますが、ジェシーは東部にいたため捕まることはありませんでした。
その後1876年再統合は実質的に破綻します。奴隷こそいなくなりましたが、ジム・クロウ法などの有色人種に対する隔離政策が立法化されてしまい、人種差別はより一層強くなりました。
その頃、ジェームズ=ヤンガー・ギャング団はミネソタ州で大打撃を受けます。ミネソタ州北部の中心、そこでの犯行は大胆不敵な行動でした。北軍の英雄や共和党議員と繋がりのある銀行を襲撃しますが、ヤンガー兄弟の三男ジョン重傷を負います。この時、街を逃げ出すため、苦しむ彼を射殺し、足手まといを減らす提案をジェシーがします。このことでヤンガー兄弟とは絶縁し、ギャング団は解散します。
自身が周りから超人だと思われていることと、強盗の大失敗。この事実に直面したジェシーは、兄弟そろって身を隠します。南部の英雄とも騒がれているのに、捕まり失敗がバレればその知名度は地に落ちてしまいますからね。
兄のフランクは隠遁生活に満足していましたが、ジェシーは過去の栄光が忘れられず気が休まらないままでした。
彼は妻には誠実で、生活を守るためには何でもしました。妻子を守るために偽名を使い、子供にも自身の名前を明かすことはありませんでした(デイブと呼ばせていたそう)。その妻子にも周りには本名ではなく偽名で通し、ジェシーのであるフランクにすら、子どもは偽名で通していたほどです。
そしてこの頃のジェシーは、簡単に人を撃ち銀行を襲う男と、教会で聖歌を歌い家族に誠実な男という二面性を持っていました。この分裂したような思いを持っていたジェシー。彼は精神的に病んでいたという見方が強いそうです。
1879年、刺激的な生活と名声が忘れられなかったジェシーは隠遁生活をやめ、再び犯罪の道へ戻ります。しかし、戦争も終わり各州が前進し始めている中、彼は取り残されていたのでした。ジェシーの信念であった、反共和党過激派というのも古い思想で誰も共感しませんでした。
ここでジェシーは地元の悪党たちを集い、ギャング団を組織します。彼らは南北戦争を体験していない若者達であり、忠誠心はなく訓練も受けていません。ジェシーはどんな者だろうと制御する自信があったんでしょう。彼は新聞などで見たジェシーを崇拝していた者たちを集めていきました。そしてそこにチャーリーロバートフォード兄弟の姿もあったんです。
ここから先が、映画によって語られるんです。これほどに複雑で、当時の南部の人間としての心情があるんです。

ジェシー・ジェームズの伝説について

ここでは、今現在伝わっているジェシー・ジェームズの伝説をまとめていきます。
敬虔なキリスト教徒甘いマスクの美男子フロンティアの郷愁を漂わせる名前。極悪非道の重罪人にも関わらず、南軍の兵士やその未亡人には優しく親切であったこと、彼の犯罪の対象が北軍などに関する限定されたものだったことから、ある程度の「義」と呼ばれるものをもっていたのは確かであり、その悲劇的な最期に同情を寄せる人も多く、またその悪行も先の通り強者に対する抵抗と捉えられたことから、ロビン・フッドと重ねる人も多くいます。1920年代になるとその義は次第に注目を集めるようになっていきました。
ではここから、ジェシーの義に関するエピソードをいくつかお話します。主にジェームズ=ヤンガー・ギャング時代のお話です。
1874年1月の列車強盗でのこと。ミズーリ州セント・ルイスにあるギャッヅヒル駅に乗り込み、駅員を脅してアイアン・マウンテン鉄道の列車を強制的に停めさせ、乗客と金庫から現金を強奪しました。その被害額は2,000ドルとも22,000ドルともいわれています。この時、ジェームズ兄弟は乗客の手を調べて労働者と女性から金品を奪わなかったため、新聞に「奪うのは労働者と貴婦人からではなく、シルクハットの紳士から」という記事が掲載さることになります。
ジェシー兄弟の人気を高めたとして有名な話が1872年9月のカンザスシティ襲撃でのエピソードです。その日、カンザス・シティでは秋祭りが開かれ、競馬を中心として30,000人の群集が詰め掛けていました。競馬も終了し、会計係が収益を集めて10,000ドルを銀行へ輸送しようとした午後4時頃、3人の騎乗の男たち(ジェシー兄弟、ボブ・ヤンガー)が突如として襲いかかりました。男たちは収益を奪うと疾風のように去っていき、銃で撃たれたり死亡したものはいませんでしたが、少女が一人、馬の蹄にひっかけられて怪我をしてしまいました。事件からまもなくして、「タイムズ」に一通の投書が届けられます。投書は先日の強盗の犯行を認めることと、同時に少女への治療代を支払う意思が表明されており、「自分たちは何百万ドルを盗んでも咎められない政治家たちよりは道義的に優れていることと、自分たちは自衛のため以外に人を殺さず、金持ちから金を奪って貧乏人に配っている」と釈明がなされていました。
また、未亡人にまつわる伝説も残されています。兄弟がとある農家で未亡人から食事をご馳走になったおり、女性から「この農場でもてなせるのも今日までで、明日からは1,400ドルの借金のために人手に渡る」と打ち明けられます。するとジェシー兄弟は1,400ドルを贈り物として未亡人に残し、驚く未亡人をおいて農家を後にします。しばらくすると農家に借金取りが訪れ、1,400ドルを取り立てて帰っていきますが、帰り道にはジェシー兄弟が待ち伏せており、まんまと1,400ドルを取り返すという話が伝わっているんです。
彼のエピソードには、新聞受けするエピソードを書かせていたこともあり真偽が不明なものもおおくありますが、1925年ロバータス・ラヴが「ジェシー・ジェームスの盛衰」を出版するとジェシーの人物像が知れ渡るようになり、ビリー・ザ・キッド同様にアウトローの象徴として英雄視されるまでになっていきました。

ジェシー・ジェームズについて②

ジェシー・ジェームズのその後について、映画内のことも含めてお話ししましょう。

ジェシーが新たに組織したギャング団は、ジェシー自身が疑心暗鬼になったことで仲間を遠ざけたり殺したり、ウッド・ハイトのように彼の知らぬところで殺された者や逮捕された者もいたため、最終的にはフォード兄弟の2人になってしまいます。

その頃、州知事の方も報奨金を用意していました。その額はなんと1万ドル。当時は家が800ドルで買えたことから、相当な額であることが分かります。

ボブは、ディック・リドルの逮捕時に協力していたことから、ジェシー・ジェームズを殺すか捕らえるよう依頼を受けたことを兄のチャーリーに告げます。自身もウッドの殺害の現場にいたことから、チャーリーは身の危険を感じるようになっていました。
この頃、ジェシーは残ったボブとチャーリーに対し親切な面も見せていくようになり、ジェシーはボブにを送りました。皮肉にも、自身の命を奪うことになる武器を、暗殺者本人に渡していたことになるのです。
そしてある日、ジェシーは仲間だったディック・リドルが逮捕されたことを新聞で知ります。ディックと行動を共にしていたボブは、いよいよ自身の反逆行為がばれそうになり、チャーリーもまた同様に恐れました。
後にボブとチャーリーは新聞にこう語ってます。「チャンスはないと思った。彼は周囲を常に警戒していて銃を片時も離さなかったから
しかしこの時、ジェシーは初めて丸腰になったのです。一体何が起こったというのでしょうか。
映画内では、娘の歌を聴き、そこから銃を置いています。彼自身、自分のこの破綻した人生を終わらせたかったのか。また彼はその前に、仲間の逮捕を新聞で目にしています。自身は逮捕されない、不死身の存在だという思いが警戒心を勝ったのか。いずれにしろ、ジェシー自身の中に周囲を警戒する以上の何かしらがあったのでしょう。それは故なのか、過信故なのか。未だに誰も分かりません。
銃を外した彼はおもむろに、壁に掛けられていた馬の画の入った額を直します。なぜそんなことをしたのか。なぜこれが目に入ったのか。なぜ兄弟への警戒を捨て背を向けたのか。そして何故、反射して見えたボブの姿に、何もしなかったのか。
ここはまさしく映画を見た人が各々に抱く答えがあると思います。
この致命的ともいえる行動を逃すはずもなく、ボブはジェシーの背後から銃を浴びせます。床に倒れるジェシー。血は床一面に広がります。銃声を聞きつけた妻ジーはすぐに駆け付け、兄弟を問い詰めます。「銃が暴発してしまったんだ」と兄弟は説明します。「意図的な暴発ねジーはすべてを分かっていたのでした。
1882年4月3日ロバート・フォードは、丸腰であるジェシー・ジェームズの頭を背後から撃ち射殺。ボブは州知事らの依頼を受け、協力した形になりました。
ボブがこのような行為を行ったことには、もあるでしょうが、やはり名声が得られること。アメリカで有名な無法者を殺せば、アメリカで最も有名な人物になれると思っていたから。ジェシーを殺した英雄として。
しかし、ボブ自身も、そして当時の人々も、マスメディアの力を知らなかったのです。
人々は無法者がいなくなったと聞き始めは喜びました。ジェシーの死体を見に大勢の人も集まりました。
しかし、その暗殺がジェシーが信頼していた仲間によって行われたこと、そしてジェシーが丸腰なのに背後から射殺されたこと。これらが伝わると、世論は変化し、一気にジェシーに同情が集まり、ボブは卑怯者の暗殺者として見なされていきます。当時は背後から襲撃するといった行為は、人の道に背く行為だという風潮があったのでしょう。
ボブは汚名を着せられることになります。死刑を言い渡されますが、知事に恩赦を言い渡されます。その後、彼は自身の行った暗殺行為を舞台にし、自ら演じてアメリカ中を渡り、再現していきました。このことで自身の名声がさらに知れ渡り、より有名になりたかったのでしょうか。自身の行いを正当化して、汚名をなくすためでしょうか。有名になるということをまるでわかってないからこその行為と言えますね。
背後から人を殺してしまった、しかも自身の友人を…という葛藤を描いたようですが、同じくアウトローであるビリー・ザ・キッドを殺したパット・ギャレットの様にはならず、称賛は得られませんでした。世論はよりボブを悪者にしていきます。
そして、ビリー・ガシェイドという男が、ジェシー・ジェームズのバラッドを歌ったことにより、ボブはジェシーを墓に葬った汚い卑怯者として知られるようになるんです。
ボブと共にいたチャーリーは激しい罪悪感を覚え、自殺してしまいます。そしてボブは、世界中から嫌われ者になっても忍耐強く生きコロラド州クリードで酒場を開き、結婚し子供も出来ます。しかし、エドワード・オケリーという人物によって最期は自分の店で殺されてしまいます。
死体は店外へとやられ、床の血は拭き取られ、その日も酒場は盛り上がったと言われています…なんだか少し切ないですね。

何故ジェシー・ジェームズは伝説化したか

当時としても、犯罪者が英雄として称賛されるのは珍しかったことです。では何故ジェシー・ジェイムズは伝説化したのか。
いくつかありますが、先に書いた通り彼の行為を英雄視する見方があったこと。特に鉄道強盗は当時の人々には鉄道事業の犯行と捉えられたことや、南軍や未亡人、貧しい労働者は対象にするどころか助けるといった義賊的な行いがあったことは大きいでしょう。
さらに、彼は34歳で亡くなっています。当時としてもこれはまだ若い方で、まだまだ絶頂期だと捉えられたからでしょう。マリリン・モンローにジェームズ・ディーンや尾崎豊のように、若くして亡くなった人は伝説として語られます。まあ実際成したことも凄いことだからですがね。
最後に、ジェシー自身のことが記録されたものが全くないことから、人となりが分からなかったからということもあります。彼のエピソードは多々あれど、どのような人物かは分からないと、人々はその行為から人格を読み取ろうとし、英雄的に見えた行為から伝説化していったとも考えられています。
以上が、伝説のアウトロー、ジェシー・ジェームズに関することです。

最後に

いかがでしたでしょうか?

今回は、「ジェシー・ジェームズの暗殺」についての感想&解説でした。

正直、日本で一番ジェシー・ジェームズについて詳しく書いたと思います(笑)参考になれば嬉しいです。

そして、是非とも「ジェシー・ジェームズの暗殺」を見ていただきたいです!見たことない人はもちろん、見て「?」が浮かんでしまった方も、これでバッチリ面白さが分かるはずです!
「ジェシー・ジェームズの暗殺」は現在U-NEXTにて見放題になってます!是非とも映画の感想をお聞かせください!
それでは最後までご覧いただきありがとうございました!

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