ヘレディタリー 継承 マジでヤバいホラー映画!圧倒的な恐怖と絶望。だけど本当傑作だ!

勝手ながら映画解説
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どうも、けんせです。

これ、たまたまネットで見つけたんですが、海外版のポスターでしょうかね、おもしろいですね!なんかクローネンバーグの「戦慄の絆」みたい…わかる人います?

さて本日は11月30日に公開された映画、「ヘレディタリー 継承」についてあれこれ書いていきます!こちら公開初日に映画評論家の町山智浩さんの解説付きの回、プラスもう2回、計3回見てきました!なのでせっかくだから町山さんのインタビューも盛り込んだものにしてきます。

近年、特に「ゲット・アウト」以降と個人的に感じてますが、すごく面白いホラーが沢山出てきたような気がします。今年で言うと「RAW 少女の目覚め」や「クワイエット・プレイス」とか個人的にすごく好きです。そんな中、これ、とんでもなくヤバいです!今年見たホラーでも、ベスト級の怖さ!もう言ってるじゃねぇか。というわけで、早速いきましょう!

 

まずは注意です。こちら感想のみではなく、いろんな考証など本編内容に触れます。後半ガッツリいきます。ご了承ください。

紹介ィィ!

ヘレディタリー 継承

グラハム家の祖母・エレンが亡くなった。娘のアニーは夫・スティーブン、高校生の息子・ピーター、そして人付き合いが苦手な娘・チャーリーと共に家族を亡くした哀しみを乗り越えようとする。自分たちがエレンから忌まわしい“何か”を受け継いでいたことに気づかぬまま・・・。

やがて奇妙な出来事がグラハム家に頻発。不思議な光が部屋を走る、誰かの話し声がする、暗闇に誰かの気配がする・・・。祖母に溺愛されていたチャーリーは、彼女が遺した“何か”を感じているのか、不気味な表情で虚空を見つめ、次第に異常な行動を取り始める。まるで狂ったかのように・・・。

そして最悪な出来事が起こり、一家は修復不能なまでに崩壊。そして想像を絶する恐怖が一家を襲う。
“受け継いだら死ぬ” 祖母が家族に遺したものは一体何なのか?(HPより抜粋)

映画『へレディタリー/継承』公式サイト
映画『へレディタリー/継承』公式サイトです。絶賛公開中。TOHOシネマズ 日比谷ほか。【超恐怖】これが現代ホラーの頂点 全米を凍りつかせた”完璧な悪夢”ついに上陸 この家族の物語は、永遠のトラウマになる―

感想ゥゥゥ!

☆☆☆☆☆☆☆☆☆  スーパーおススメです!

想像以上に傑作。数多のホラーを受け継ぐ新たな系譜となる作品!

今現在、評価は割れ気味ですが、僕ははっきり言います。これは傑作です!

というより各所で言われてますが、これはホラーの新たな系譜となる一本だと思います。様々な映画の要素を多分に含んでいながら、金字塔とでもいうべき作品です。

予告編とか見てもらったら分かりますが、「この少女がヤバいのかな…?」と思っている(ここ、「キャリー」みたい…)と、とんでもないことが起こって予測不能!ここの辺りヒッチコックの「サイコ」を彷彿とします。そしてその後のオカルトな展開は「ローズマリーの赤ちゃん」…話の大筋をなぞってるだけでもすでに3本程(もっと出てくるかもしれませんが)出てきます。

なのにこの展開はすごくフレッシュ、凄すぎます。「思てたんと違う!」ひねりを利かすのは常なことですが、ここまでひねられるとは…もはやちぎれてます。はぁ?多分今の世だからこそできた到達点の作品と感じます。

 

これが長編一作目となるアリ・アスター。素晴らしい監督ですね。今後もすごく注目な監督です!

あの音が聞こえてくる時…音楽も超いい!

ホラーには音、音楽が重要です。「サイコ」のテーマもあの瞬間によってがらりと変わり、「クワイエット・プレイス」では逆に音の恐怖を逆手に利用したのも記憶に新しいはず。

この映画も非常に恐ろしい音楽が響き渡ってます。不気味な低音、心音にも似た音、追い立てられる音等。この映画のストーリーのように危険で広がりのある、それでいて複雑という非常に不気味な音楽が流れてます。が、予告編でもラストに聞こえる「コッ。」という音。これはクリッカー音といって口の中で舌を使って鳴らす音です。これがとかく不気味で、劇中の流れの中で聞こえてたときに訪れる絶望感はたまりません。

そして最後に流れる、全く不釣り合いなほど明るい、ジュディ・コリンズの「Both Sides Now」。なんでやねん!となりますが、これは対位法といっていいでしょう(監督曰く、ジョークだそうです)。また、この曲のタイトルが意味することも映画を見ればわかります。

なんだその顔。役者さんの演技が凄まじい!

ホラーにおいて演技も重要(全部そうか)。古くはクラシカルホラー、ドラキュラやフランケンシュタインなどと存在しないものに命を吹き込んでモンスターにしたり、近年だと「羊たちの沈黙」のアンソニー・ホプキンス、「ゲット・アウト」のダニエル・カルーヤはアカデミー賞をノミネート、受賞してます。ホラー映画には名演技が沢山あるんです。そしてそれは今回も例外に及びません!

特筆すべきは母アニーを演じたトニ・コレット。すでにアカデミー賞ノミネート確実視されてますが、本当に圧巻のパフォーマンス!怖いことが起こってるけどあなたの顔の方が怖いよ!的なことが連発します(笑)

これですね。怖いよ~。ただ、ここまで迫力に満ちた演技は見ものです。

また、チャーリーを演じられたミリー・シャピロもすごい。奇妙な行動などもそうですが、不気味さを放つ存在感は圧巻。正直、見たら頭から離れない。この人はミュージカル「マチルダ」でトニー賞を受賞されてるすごい人。この舞台では明るい女の子をやられてたのに、初映画でこれってすごいですね。

ご覧ください。不気味ですね…正直素晴らしい演技です。あと観たらわかりますが、おっぱいがデカいです(破廉恥、はい帰れ!)。

あと、お父さんスティーブンを演じてるガブリエル・バーンは今回すごく抑えた演技をされていてすごく他の演者さんの味を出してます。後述しますが、アニーのことを一番理解してる立場がゆえにアニーの感情が暴走するところは見てて面白かったです。

最後、劇中とんでもない目に合う長男のピーターを演じられていたアレックス・ウルフ。僕はものすごく好きな俳優さんで、今後確実に演技派に成長されること間違いない方です。今回もすごくおもしろかったです、が、町山さんがおっしゃってましたが、ムロツヨシそっくりですw

並べてみました。こう見ると、ほくろ逆なんですね。…何の話?どちらも素晴らしい役者さんです(フォロー下手やね)。

というわけで、まず一度は観てください!

この映画、ホントに良くできた作品です。

すごく言われているのが、キューブリックの「シャイニング」のようにのように計算され尽くされている。この作品は史上最も怖いホラーとされてるのでこの映画は史上クラスにすごいんです。

あまりにも面白くて、でもそのお話はこれでもかというほどダークで嫌で、すごくエンターテイメントに富んだ(ただし、その怖さはトラウマ)映画なんです。またお話はもちろんのこと、細部にまで至って細やかなつくりの映画なんです。一度見た限りだとなかなか全部理解できないと思いますし、また2回目のときは新たな発見と、別の角度でお話が見られるようになるはずです。

ぜひとも一度見ていただきたい映画です!

またここから先はネタバレをしながら映画の解説と考察をしていきます。まだ見てない方はぜひ映画を見てからまた見てください!

≪ネタバレ注意≫解説ゥ!

ここからは、観た方に向けて作品内に散りばめられたものを紹介していきます。映画のホームページにも最近出てますが、それと町山さんの解説も交えて書いてみますので、ぜひ見てください。正直かなりツラツラ書いてしまってる印象があります…すいません。ただ個人的に膨らまして面白く暖かい目で見ていただければ幸いです。

実は「怖い」よりも「厭」な映画

観た方ならわかると思いますが、これ実は「家族の崩壊」がテーマという、家族映画になってます。

アスター監督が「ヘレディタリー 継承」のなかで最も影響を与えてるのが、「普通の人々」という作品です。僕もこのタイミングで鑑賞しました。

これはロバート・レッドフォードが監督しておりアカデミー賞作品賞を受賞してる作品です。お話はボート事故で兄を亡くした弟が、兄を溺愛していた母に責められる話です。お母さんに責められ続けてもなお愛してる弟は、お母さんも愛しているはずだと抱きしめキスをします、が、その行為に対して無表情、もっと言うと気持ち悪いとさえ感じてる母の表情がとても怖く印象に残る作品です。

また監督曰くアン・リー監督の「アイス・ストーム」も影響を与えてます。この作品は(まだ未見なのですいません、町山さんの解説とネットの情報で書いてます)当時フリーセックスが流行ってたニューヨーク郊外で、両親が興じている間、子ども(子役時代のイライジャ・ウッド!)を事故で失ってしまう家族を描いた物語。この時点で嫌ですね。「ヘレディタリー 継承」では、スティーブンが車の中で嘆くシーンがこの映画から来てるそうです。

このような「厭な」家族映画は古今問わずたくさんあります。

代表でいうとやはりイングマール・ベルイマンの作品でしょう。「叫びとささやき」は「エクソシスト」に非常に影響を与えてますが、この映画も家族のお話です。ベルイマンの作品は一見すると家族映画と分からない程、家族の話で中々ヘヴィな物語が多い印象です。アリ・アスター監督も好きな監督とのことです。

他にも、ラース・フォントリアー監督作品もこの系統の作品が多く見られます。特に「アンチクライスト」は先述の「アイス・ストーム」と似たような展開でした。ケン・ローチの諸作、マイク・リー監督の「秘密と嘘」「人生は、時々晴れ」、作品だけでいうと「赤い影」「イン・ザ・ベッドルーム」、日本の映画からも新藤兼人監督作の「鬼婆」だったり、「雨月物語」と様々あります。最近でも邦画だと「葛城事件」や洋画だと「聖なる鹿殺し」(後述しますがこの映画の中で出てきたお話とヘレディタリーにも共通して出てくるものがあります。偶然だそうです)「ラブレス」なんかもこの系統でしょう。

この脈々と続く「厭な」家族映画の集大成ともいうべきものが「ヘレディタリー 継承」になるわけです。

オープニング

この映画はオープニングから中々異様な雰囲気を持っています。まず、エレン・リーの死亡広告から始まります。ここにもすでに仕掛けが施されてますが、ここに関しては後でたっぷり触れてますね。

そして窓ガラス越しにツリーハウスが見えるショット。実はここのツリーハウスも、ミニチュア感があるんですよね…この違和感を感じたままカメラは回り続け、とあるドールハウスにグゥゥウっと寄っていきます。

すると寄っていた一室が突如現実の空間に変わっているんです。

ここで我々は入れ子構造のトリッキーな手品を見せつけられます。つまりここから先の話は、結局はこのジオラマの一部に過ぎず、彼らもまたドールハウスのドールに過ぎない、彼ら以外のもっと大きな何かに操られるという暗示でもあるんです。

事故

この映画の中で最もショッキングなシーンはズバリ、チャーリーの死だと思います。

前半の不気味さからみんな彼女が何かしらしてくると思っていたら、とんでもないことが起こりますね。(この時の首に虫が集ってるシーンは本当に見てて気持ち悪くなりました…)ここは先に述べた通り「サイコ」のオマージュだと思います。そしてチャーリーの死により、家族は地獄絵図の様相になります。

この死に対して、家族は本来向き合わなければならないはずですが、逆にバラバラになっていきます。事故を引き起こした・・・・・・・・・ピーターは事故を伏せてしまいます。ここ、すごく悲惨で自己中的な行為に見えますが、彼を完全に悪者にはできないと思います。突然のことでどうすることもできない動揺が見えて、それがより恐ろしい選択をしてしまったんだと思います。

母のアニーはショックを受け、チャーリーの死を受け入れられません。ピーターと同じ家にいることが出来ず、寝る時はチャーリーがよくいたツリーハウスで寝て、帰ってくるタイミングでは車に隠れ、出かけてしまいます。作っているドールハウスはよりダークさを増していき、事後現場のミニチュアを作ってしまう始末

父スティーブンは母と子の間をなんとか取り持とうと奮闘しますが、うまくいきません。

そしてあの荒みまくった家族の食事シーン。あまりにも凄惨でキツい。キツかったですね。向き合おうともがいても、愛そうと努めても、許せない。母と子のエゲツない確執は父にはどうする事も出来ないんです。

…しかし、この事故はあらかじめ予定されていました。「呪い」なのです。(誰かの仕業というより、この言葉の方がしっくりきます)後に出てくるエレンのアルバムから、グラハム家の写真を祭壇に祀って何やら儀式をしている様子が収められています。

ピーターの友人のハウスパーティに向かう途中、右から来る車をカメラが追いますが、電柱でピタと止まり、グググッと寄りになる。その電柱に刻まれてるシンボル、それは祖母エレンのネックレスの紋章なのです。

アニーの家族

ここで、アニーの家族について考えてみましょう。まず、アニーが今の家族になるまでのことに関しては、エレンの死亡広告とアニー自身が語っている部分で推し量ることが出来ます。

アニーの実家のリー家は、かなり荒んでいます。父は妄想性の鬱病でアニーが幼い頃に餓死、兄のチャールズは統合失調症という診断されており、チャールズは16歳の時に首吊り自殺しています。母エレンはというと、自分のことを家族にほとんど明かしていません。アニー自身も知らなかった。晩年は解離性同一人格障害や認知症と診断されてます。

ですが、アニーは母エレンを愛してました。

まずは自分で話していたからです。あのセラピーの場では時々否定もしていましたが、やはり「愛する人を亡くした人の会」に出席している時点で、動転しているのが伺えます。やはり唯一残った家族ですから。

そしてもう一つ、母の葬式の際のアニーのスピーチにも出てるんです。まず、あの象徴的なエレンのネックレス。葬式の際、アニーもしています。恐らくリー家の紋章だからでしょうが、映画を見た後だとまた違った様相が出てきます。後で書くとして、そのスピーチでアニーはこんなことを言ってます。

「母は答えを出してくれる存在でした。母の出した答えを間違っていると言う人は、その人が間違っています」

母のことを尊敬しているから出た言葉でしょうが、後の展開を鑑みると、もしかしたら操られていたのでは…?とも考えられます。

そしてこんな家族の中で育ったアニーは自身もおかしくならないだろうか、と心配していました。そしてやはり、彼女は夢遊病を患っていたのです。

アニーはその治療の際、後の夫となる精神科医のスティーブンと知り合うのです。

何故スティーブンが精神科医か分かるかというと、町山さんがおっしゃってましたが、この映画の冒頭、エレンの死亡広告ところ。その際、はっきりと「Dr.」と出てくるんです。ですが、その後のスティーブンの職場のシーンでも白衣を着てません。白衣の無い「Dr.」は、精神科医なんです(日本語訳を追うと、「博士」と出てくるので分からなくなりますので注意です)。

そしてその治療が、箱庭療法なのです。

ミニチュアと家

アニーはジオラマ・アーティストです。美術館で自身の作品の展示会をするため制作していることが分かります。ちなみにここで使用してるアーティスト名はアニー・リーです。何かを感じますね。これはそもそも治療として始めたものです。セラピーの一種ですね。なので彼女の作品は、グラハム家やエレンの治療のホスピスなど現実を反映させたものだらけなんです。これによってアニーは、自分の人生や経験、記憶をコントロールしようとしていたんです。それも幻想に過ぎなかったのですがね…

ここでミニチュアの話をしたので、グラハム家の家についてもお話させてください。

この一家が住む家と、家の内部(一階、二階、屋根裏部屋など)、庭のツリーハウスはこの映画のために一から作り上げたそうです。それによって、この映画の異常なショットだらけの家の様子ができたんですね。壁とか外せたそうですよ、メイキングが見たいですね!

そしてミニチュアは、この一家がまるでミニチュアの中の家族のように外の大いなる力によって操られている事のメタファーだと解釈できます。オープニングも似たような感覚にさせられますしね。一家の住む家の俯瞰ショットも多分いくつかミニチュアだと思われます。

アニーの病気

やがてアニーは結婚し、ピーターとチャーリーを授かります。しかしここで、エレンが介入してくるのです。

なぜ介入するのかは後で書くとして(いろいろ前後してすいません…)、まず男の子のピーターをエレンは狙います。しかし、みんなを操ろうとするので、スティーブンによって不干渉ルールを決められて手が出せなかったのです。その後、チャーリーが生まれます。アニーはエレンにチャーリーを差し出すのです。

そして時がたち、この映画軸の2年前に事件は起きるのです。夢遊病によって、アニーはピーターとチャーリーを殺しかけたんです。全身にシンナーをかけてマッチで焼身しかけたんです。からくも未遂で終わりましたが、これが原因でピーターとアニーに確執ができたんですね。

なぜ2年前なのか。おそらくこれはエレンの介護が原因じゃないかなと思います。精神科にも通って箱庭療法もしているのに、夢遊病の症状が出たんですから、彼女と一緒に住みだしたのがこの頃なんじゃないんでしょうか。また、彼女の新しい治療としてグループセラピーにも通うことになったと思います。憶測ですのであしからず。

ちなみに、これは憶測なのですが、チャーリーの部屋にある呪文のようなもの、あれはエレンが書いたものと思われます。恐らく晩年一緒に住むようになってから書き記されたのではないでしょうか。だから認知症とか診断されていたのかもしれません(ここの真偽も分からなくなるあたり、クラクラします)。

そして、エレンの死、チャーリーの死によって完全に夢遊病が再発し、ピーターの部屋に行っていたんです。

僕はこの映画の最も怖いシーンは、アニーとピーターの真夜中のシーンだと思っています。

ピーターの顔に蟻がたかる幻影を見たアニーは直後、ピーターの声で目を覚まします。「チャーリーは?」と錯乱する彼女は息子に「なぜ僕を恐れるの?」と聞かれ、思わずあなたなんか産みたくなかった」と言ってしまいます(思わず口を塞ぐのも嫌ですね、思ってたこと言っちゃった的な感じがして)。母になる不安や自分に自信がないからと言い訳してますが、嫌ですね、ここ…僕も長男ですので、もしかしたらうちのお母んもこんなこと思ってたんじゃないだろうか、と考えると恐怖です。やめて、もう。で直後、ピーターもアニーも何か濡れたようになります。そして、炎に包まれる!

その瞬間、アニーはまた目が覚める…謎のループに苛まれてるんです。ここは夢遊病の描写になっていて、見てるこちらも混乱してきます。これはかつて、アニーがシンナーで兄妹を焼き殺しかけたところなのでしょうが、果たしてどれが真実なのでしょうか。

ここのシーンはかなり強烈で、「母の無条件の愛」というものを否定している救いのない描写と言えるでしょう。しかしまた、彼女の行為もまた、愛によって行ったと言えるのもまた事実です。

どういうことかというと、彼女の実家は崩壊していますね。また彼女自身、精神を患っているのです。そんな状態で、母という大役が務まるでしょうか。実際、チャーリーの死後は母としての責務をある種放棄してる感も見られます。またここに、エレンの存在が関わってきます。母はカルト教に入れ込んでいて、生まれたばかりの息子を狙っていた。そんな母が、治療のためとはいえ同じ屋根の下に住んでいる状態、息子を巻き込んで何かをするかもしれないという危機を無意識で感じ、それ・・からピーターを守るために無意識の愛で焼き殺そうとした…どうでしょうか。夢遊病というのがもう一つのアニーの真実と見た場合、こんなことも言えるのではないでしょうか。

では、果たしてそれ・・とは何なのでしょうか。

この映画において、とても重大な役割を果たしているあの「光」。劇中初めての登場は恐らくチャーリーが部屋で視認するところですね。何故恐らくかというと至る所に出現しており、正直全部把握しきれていないんです、僕が。すいません。これは果たしてなんなのか。

これは、この物語の諸悪というべき悪魔の王ペイモンなのです。エレンたちが信奉していた悪魔でもあります。

まずここでペイモンについて話しておきます。ペイモンは1700年代のヨーロッパの伝承に登場する悪魔です。地獄の階層ランクでは高位に位置し、王や公爵の地位に当たります。現世に現れるときは王冠をかぶって登場するそうです。ゴージャスですね。ここの豪華な感じは、エレンのアルバムの一つに金貨の舞う中をエレンが戴冠している儀式の写真で見られます。ここは最後に明かされる王妃(クイーン)リーの式でしょう。

ペイモンがもたらすもの。それは富と知恵。いぃや、どこが悪魔ぁ~!(粗品風にお読みください)と言いたくなりますね。ペイモンはそもそもキリスト教の前に中東あたりで信仰されていた土着の神が由来なのではないかとされています。この例で有名なのはベルゼバブですね(ベルゼバブ、今大ブームのボヘミアン・ラプソディの歌詞にあるって知ってる人いますか?)キリスト教によって神は一つにされ、他を悪魔と呼ぶようになり、悪魔とされたのではないかと言われてますね。かつては人間に害をもたらすものも神(祟り神)と称してますので、その影響もあるかもしれません。日本でいう水神様とか貧乏神様とかそんな感じでしょうか。

またペイモンは、男性の肉体に宿るとされています。だからこそ、ピーターは狙われていたのです。王妃リーの血筋の男性であるピーターこそ、ペイモンが求めるものなのです。父スティーブンは娘婿なのでこの役目は務まらない。アニーの兄チャールズは自殺をしてます。「母さんは僕の中に何かを招き入れようとした」と遺書を書いて。つまり失敗だったんです。ただ、この悪魔崇拝自体は彼女が始まりではないはずなので、恐らくペイモンは入ったが、チャールズの意思で死んだと思います。もしかしたらですが、だからジョーンはピーターに「出ていけ!」と言っていたのかも。王の邪魔をするな、と。そしてあの儀式の写真、今見ると結婚式のライスシャワーのようにも見えますが、あの時期はおそらく、チャーリーが誕生したときではないでしょうか。

監督のインタビューにおいて、「チャーリーが生まれた時から、ペイモンは彼女の中に存在した」と語られてます。チャーリーが普通ではないのは劇中の描写で納得ですが、実はアニーのセリフで「あなたは赤ちゃんの時から泣かなかった、生まれた時でさえ」と言われてますよね。これは初めからペイモンが存在していた暗示なのです。しかし、ペイモンは男の肉体に宿ります。なので彼女は用済みになり、命を落とすんです。先程言ったこの光の初出現シーン、見てるのはチャーリーです。なのでこの光はペイモンであると同時に、ペイモンのエネルギーと言えると思います。

さらにペイモンは現世に現れる際、人間の生首を携えて現れます。画像にも腰のあたりに生首がぶら下がっているのが見られます。これが王妃リーの血筋の女性が首を切られている事への暗示となるのです。ラストのツリーハウス内にある二つの首のない遺体。一つは王妃リー(エレン)、もう一つはアニーです。その前で宙に浮きながら首を切断しているシーン、その体がツリーハウスに運ばれるショットから確認できます。そしてチャーリーのあのムゴすぎる死も、これが要因なのです。ちなみに、父スティーブンも焼け死んだ上首を切られてるのが少しですが確認できます。ピーターに流れる血筋の者全員の首が、ペイモンへの捧げ物ということなのでしょうか。

最後に、ペイモンがピーターの肉体に宿り、現世に出現した際、ジョーンはこんな事を言ってます。

「我らに秘密と富を与え給え。我らに良き使い魔を与え給え。我らに人々を従わせ給え」

ペイモンの力のもう一つが、恐らく最後の「人を従わせる」ことだと思います。悪魔の王と言われるが故の力だと思いますが、これによりこの光を見たり浴びたものがこの巨大な力に従う(というよりは抗えない)んだと思います。小さいところで言えば物を動かしたり、人を導いたり。大きいものはやはり最後のアニーの行動に現れてますね。壁を伝い、宙を舞い、屋根裏部屋の扉をヘッドバンキング!…ナニコレ。文字だけ書いても異様ですね。映像はもっと怖いです!そしてなぜこんな力がアニーにあるかというと、直前に光によって体を支配されていたのです。最後に、アニーの首を切り落とします。

そして最後、屋根裏部屋から墜落したピーターの体に光入っていくのです。

ちなみにここで、ピーターの体から黒い何かが抜けていく様子が見えますね。あれなんですが、僕は二つの考えが浮かびました。一つはピーターの魂。ピーターが死んだことを暗示してます。もう一つはペイモンのエネルギーによって運ばれるアニーの遺体。影を見ると首がないことと、ツリーハウスに飛んでいくところから推測しました。果たしてどうなんでしょうか?どちらもあるかもしれませんね。

目を覚ますピーター。しかしどうも様子がおかしい。大丈夫か?と思っていると、

 

 

 

 

 

 

 

 

「コッ」

 

 

 

 

 

見てる側はこんな感じになりますね。

HEREDITARY

しかしこの映画、ラストにはなぜかカタルシスすらあるんですね。

ピーターの肉体にはペイモン=チャーリーが宿ります。チャーリーはゆっくりとツリーハウスに歩を進めます。クリッカー音を響かせ、悪魔崇拝者が見ている中。そしてツリーハウスの中には、裸で礼拝をする(「服従の土下座」ですかね、名称がわかんない)崇拝者たちその足元には首のない二つの遺体。先述してる王妃リーとアニーですね。そして後ろを振り向くと、金の王冠を被ったチャーリーの首と金の鎧が。ペイモンの象徴なのでしょう。ここでかかっている音楽、これはヘンデルの「司祭ザドク」。戴冠式のごとき高揚感で迎えるんです。そして王冠を被るチャーリー。

悪魔の王ペイモン、遂に現世に降臨

結願した彼らは「ヘイル、ペイモン!」と叫び、崇拝し続ける。最後、このツリーハウスが突如ミニチュアのごとく切り取られて、終わっていくんです。

最後、王妃リーらの視点に変わっているのが分かるでしょうか。

それまでは、グラハム家にとって継承されたものは「病」でした。アニーの夢遊病は、その父、兄からの遺伝的な病であるがゆえに、それに苦しまなければならなかったのです。ただそれは、表面上に過ぎないのです。

祖母エレンが残し、継承させたもの。それは王妃リーの「血筋」なのです。

この血筋によって、グラハム家は崩壊してしまいました。ペイモン召喚のために、ピーターはもちろん、リーの血を継ぐ女性の首も必要だったのです。グラハム家からしたら、すべて奪われました。しかし最後のツリーハウスを見てください。エレンはもちろん、アニーにピーター、チャーリーもいるんですよ。つまりこれは、リー家がついに家族となった、ということなんです。ファミリーリユニオンなんです!アガリますねぇ!

そしてそれは王妃リーの思い描いていた通りの形としてです。映画前半葬式が終わり自分のアトリエで母の遺品を眺めていた時にある手紙が出てきます。そこにはこう書かれていました。

「愛しのアニーへ どうか許して、多くを言えなかった。失うものを嘆かないで。犠牲は大いなる称賛のためにある 愛をこめて 母より」

すべては母エレンが初めから残していたものだったのです。

最後のミニチュア風のショット。ミニチュアはすべて作られています。

つまり、これらは大いなる力によってなるべくしてなったものである、ということなんです。

一言でいうと、運命です。

そしてエンドロール。赤くなった文字が一文字ずつ受け継がれていく中流れる「Both Sides Now」。歌詞にはこんな意味があります。

「世界は私が思っていたのとは違う面を持っていた。私は何もわかっていなかった」

…はあぁぁぁあ。怖い!


 

学校の授業

そんでここからは、いくつか大筋に入りきらなかった部分を紹介していきます。

まずピーターの学校での授業です。ここのシーンは最初は女の子のお尻、次のところではピーターの顔面強打で薄れてしまいがちですが、この映画のテーマを話しています。

最初の時は「ヘラクレス」の話です。もうすでにクソ長いので概要だけ書きますが、ここでは「ヘラクレスの選択」について話されてます。ヘラクレスは選択をしたんじゃなくて、そもそもそれ以外道がなく、運命に縛られていた。という感じですかね。最後まで見た方ならわかると思いますが、ピーターとそっくりですね。

またもう一つでは「イフゲニア」について。これはトロイ戦争の時に海の風がなく帆船が出なくなってしまったときに生贄になったお姫様についてです。わが子を生贄にするというお話、ここも繋がってますね!ちなみにこのお話は今年公開された「聖なる鹿殺し」にも出てきますよ!あれも嫌な話でしたが、アリ・アスター監督は大好きだそうです(笑)

交霊会

ここでこれについてもお話ししましょう。ここのシーンは、それまではある一定のホラーの線を超えなかったこの映画、例えば暗がりで服の置き方でなにかに見えてしまう、ひとりでにビンがこける、あのクリッカー音がきこえてしまう等、どこか間違いで済みそうだったラインを悠然と踏み越えていくシーンでもあるので、非常にドキドキします。

ここで重要なのが、アニーの言動です。ジョーンの家で見せられた時、少し意識が飛んでいるのが見受けられます。ここから実は加速的に夢遊病が出てくるのです。そこで渡された呪文。覚えている方もいるかもしれませんが、ちょいちょいペイモンという言葉が出てきてます。つまり、ペイモンを召喚するための呪文なんです!

そして次の交霊シーン。グラハム家で行われた時、アニーはおかしな言動をします。まるで、チャーリーがとり憑いたように。ここなんですが、ちょっと難しいんです。いろいろなことが起きてるんでまだ不確かなんですが、実はこの時にすでにアニーの肉体はペイモンが操れるようになっていたんじゃないかと推測します。チャーリーのような言動をしていること、チャーリー=ペイモンだということからこう推測できるんじゃないでしょうか。

文字

前にも少し触れた部屋に書かれてある文字。実はこれ、この物語を3つに分けられる文字なのです。

一つ目が「Satony サトニー」。これは死者とコミュニケーションをとるために使われた言葉で、この文字は映画でも序盤に出てきてます。その後アニーが母の幻影を見たり、亡くなったチャーリーと繋がろうとしたりとしていきますね。

2つ目の「Zasas ザサス」。これはイギリスの著名なオカルティスト、アレイスター・クロウリーが悪魔コロンゾンを呼び出すのに使った言葉です。ここはあのジョーンから渡された呪文を口にしているときに出てきます(のはず…)。うかつに発した言葉によってとんでもないことになる。ホラー映画らしきとこでもありますね。

最後に「Liftoach Pandemonium」。これは古代ヘブライ語の「開く」という意味の言葉「Liftoach」とルシファーがいる悪魔の巣窟や地獄を意味する「Pandemonium」を組み合わせた言葉です。つまり、「地獄よ、開け」ということですね。アニーが母の目的、ジョーンの正体、自分のしたことの愚かさに気づいたときはもう遅い。地獄はもう、始まっていたんです。

悪魔崇拝者

最後にちょろっとだけ。エレンの葬式でアニーは「見知らぬ人が大勢いる」と話してます。これは後に判明する悪魔崇拝者たちになるわけですが、ラストに集結する前からチラチラいるんです。まず、エレンの棺をみるチャーリーに対し笑いかける男。あれはピーターが顔面強打したときの夜に、アニーに追われる直前扉にいる真っ裸の男です。また、学校にいるチャーリーに遠くから手を振る女性、これはピーターが逃げ込む屋根裏部屋にいた女性です。ちなみにこの女性、ピーターが扉を閉めて喚いているときからすでに見えていたんです!これ気づいたとき結構ゾッとしますよ。

あと、光が最初に出現するシーンで、導かれるチャーリーを真上から見下ろすショットがありますが、その時にもう足跡があるんです。その先には炎と女性が…彼女はいったい何だったのかは推測でしかありませんが、おそらくグラハム家に呪いをかけていたんじゃないでしょうか。これはその後のある疑問にも関わってきます。

ちなみに、スティーブンが炎に包まれたシーンの直後、日中から夜にジャンプカットしたとき、家の周りには悪魔崇拝者らが裸でずらりといる異様なショットが数秒あります。初見時は気づかず、後になって違和感がしてもう一度見たとき鳥肌が立ちました…ぜひ家の周りにも注意して見てください!

考察!

ここでは以上のことを踏まえたうえで僕が気になったことをいくつか考えてみます。おそらくあと1回以上は観に行くかもなので何かわかったら追記します。

¿幽霊は本当なのか?

これは映画秘宝に載っていたのですが、この映画には曰く本物が写ってるんだとか。問題のシーンは1時間50分過ぎごろ、顔を強打したピーターが目覚め、家の中の様子がおかしいと気づくシーン。まず広いショットで部屋全体がとられてます。つぎにピーターにアップになるんですが直後、ピーターの後ろをヒラヒラ何かが通る様子が出てきます。ここが、問題のシーンだそうです。

で実際そこも注意してみてみました。で、だした答えを先にいうと、

幽霊じゃありません。

と思います。と思いたいです。(泣)

ただ、よく見るとわかるんですが、部屋のワイドショットの時。ピーターの上に、暗闇なんでわかりづらいですが、なんとアニーが壁に張り付いているんです。スパイダーマンばりに。その後移動するときも壁伝いで動いてるのが確認できます。ただ異常な動きなんで、あんまりアニーと視認しづらいのも事実です。でもひょとしたら別のところにいたのかもしれないし、そもそもそう思わせた映画の勝ちですね!

¿祖母エレンの死体は誰が運んだのか?

これも多分気になっているところでしょう。あとパンフレットと町山さんの話から考えてみます。

エレンの葬式後、1週間で荒らされてる報告を受けます。写真でも荒らされているのが収められてますし、屋根裏部屋にはエレンの死体がありましたね。蠅もたくさん沸いているので、そこそこ日が経っているのが分かります。果たしていったい誰の仕業なのでしょうか。

この墓荒らし、これは悪魔崇拝者たちの仕業だと思います。ですが、屋根裏部屋にいれたのは、アニーです。

映画では特に言及されておらず、父スティーブンの推測でしか話されませんが、推測できるところが二箇所ほどあります。

一つ目はアニーが初めてジョーンの家に訪れたとき。ここでアニーは薬を飲むシーンで、手に泥のような何かが付いてるのが伺えます。どこでついた泥なんでしょうか。ちなみに、ここの前にミニチュア制作中にビンがひとりでに倒れるシーン(ここでジョーンが渡したメモに繋がるんです)、ここのアニーの後ろにペイモンの光があるのに気づきましたか?ここも操られてるんですね。

そして二つ目。アニーが自身のジオラマを叩き壊した後、家に帰ってきたスティーブンとピーターは異臭に気が付きます。自身のアトリエにいるアニーはあまり気にしてません。ここ、壊れたジオラマからの匂いとも取れますが、ここでエレンの死体が屋根裏部屋に入れられた瞬間とも取れますね。異臭も、死体からの腐乱臭と取れますしね。

このころアニーは夢遊病が特にひどくなっているのが伺えるので、無意識のうちに行動しているからですね。また、ペイモンの光によって操られている可能性もありますね。

¿なぜチャーリーは初めからペイモンなのか?

個人的に、ここが書いてて気になったところです。

どういうことかというと、チャーリーの中には初めからペイモンがいる、というのは先に話しました。ここで少し疑問に感じたのが、生まれたときからペイモンはいることができるなら、何故ピーターの時にはいなかったのか。

もちろん、チャーリーはその後エレンに育てられているので(その写真とかもありましたね、不気味ですが)それが原因とも取れます。ただ、それだと生まれたときからの理由がいまいち説明がつかないんですね。

ところが。ここで一人忘れている人がいます。それはアニーの兄妹、チャールズです。

チャールズは先にも述べた通り、エレンにペイモンを入れられ、自殺をしていますね?この時にチャールズの中にペイモンがいたままだとしたら。

チャールズ「Charles」、これは男性名です。女性名は「Charlotte」などありますが、どちらも愛称はチャーリー「Charlie」。

つまり、「チャーリー」は「チャールズ」からペイモンを継承しているんです。

確かではないですが、これによってなぜチャーリーはペイモンであったのかに説明が付きますし、さらにこの物語を支配する力の巨大さが、そして決定づけられた運命の怖さがより引き立つのではないでしょうか。

最後に

いかがでしたでしょうか?

この映画の持つ怖さ恐ろしさ、ラジオで宇多丸さんもおっしゃっていましたが「本気で世界を呪っている」映画なのでその恐怖もそこが尽きませんね。

ちょっとこればかりもあれなので、最後にキャストさんたちの仲睦まじい写真もどうぞ!

正直、ここまでの長さになるとは自分でも思わず、かなり見づらいと思います。ですが、ちょっと書いてて止まらなくなってしまったもので、すいません。

また、つい先日twitterにて監督への質問を募集されてました。僕も三点ほど伺いましたので採用されていてほしいですし、面白そうでしたら追記します!ほんと大学のレポート並みだなこれ。

それでは最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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